原発の新安全基準/なし崩しの再稼働が心配だ

原発の新安全基準/なし崩しの再稼働が心配だ

国の原子力規制委員会が原発の新たな安全基準(骨子)を示した。福島第1原発事故の反省から、炉心溶融(メルトダウン)に至る過酷事故への対応や最大規模の「基準津波」を設定し、浸水対策を求めたのが特徴だ。
安全性を高めることはもちろん大切だが、新基準さえ満たせば再稼働が実現するわけではない。安易な再稼働は将来に禍根を残すことになりかねない。原子力が抱えるさまざまな問題を真剣に議論することこそが「基準」となるべきだ。
規制委が示したのは原発の新たな設計基準と、設計基準を超える過酷事故への対策。水素ガスなどを外部に放出する「ベント」や、メルトダウンした核燃料の冷却などを求めている。
原発事故で明らかになった対策の不備を、あらかじめ解決しておくという発想だ。
いわば「対症療法」を決めたわけだが、どうやって事故が起きないようにするかという肝心な点ははっきりしない。
地震や津波はもちろん航空機墜落による衝撃を受けても、メルトダウンなどが起きないような対策を求めるという。
そこまで追求する意欲はいいとしても、実現可能性には疑問符が付く。結局は中途半端に終わってしまうのではないか。
規制委は新基準をことし7月から実行に移す方針だが、対策によっては猶予期間を設け、再稼働を容認するケースもあり得るという。
そうなると何のための新基準か、分からなくなってしまう。規制委は原子力技術を審査する唯一の「番人」なのに、その役割を早々と自ら放棄してしまうようなものだ。
ただ、実際に再稼働させるかどうかはもはや、規制委の技術的な判断だけでは済まない。
使用済み核燃料の処分方法に手を付けないまま再稼働に踏み出せば、問題を深刻化させるだけだ。再処理しても、高レベル放射性廃棄物の処分という難しい課題が残る。
再処理しようがしまいが解決は容易ではないが、せめて使用済み核燃料をできるだけ増やさないことは必要だ。そうした問題点を置き去りにしたら、将来への負担を重くするだけだ。
さらに原発事故のコストも判断材料にしなければならない。
福島で起きたメルトダウンと放射性物質の大量放出によって、復旧には一体どれほどのコストがかかるのか。原発事故から2年近くたった今になっても、まだ先は見えないというのが実情だろう。
再稼働を検討するのなら、中長期的な視野に立って別の選択肢を示すのが望ましい。たとえ事故が起きても、原発のような途方もないリスクをもたらさない新規電源なども考慮すべきだ。そのプランを示すのは規制委ではなく政治の役割になる。
今後を見据えた議論が不足したままで、いたずらに原発へのブレーキを緩めれば元のもくあみになりかねない。後戻りは容易ではないだろう。その愚はぜひとも避けるべきだ。

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